上の575が浮かんだのは、小松橋~鎌倉橋の上水右岸に隣接している保存樹林で
金蘭に出会った時でした。俳句になっているのかどうか…分かりませんが、一株のキ
ンランが“かぐや姫”のようで、その辺りだけ輝いて見えました。
日本最古の物語だとされている『竹取り物語』のかぐや姫は、竹取りで媼と二人暮らし
の生計を立てている翁が竹林で、光輝く竹の中に生まれたばかりの女児を見つけるこ
とから物語は展開しますが、幼心に焼き付いていた“かぐや姫”のイメージと保存樹林
で出会った金蘭がクロスして、以来、私にとってキンランは雑木林のかぐや姫に。
新緑の雑木林の下で、ほっそりとした茎が黄緑の葉に抱かれるようにして立ち上がっ
てくる金蘭。その茎の頂部につけた黄色の小鈴が開き始めると、遠目にも「アッ!か
ぐや姫だ!」と、ファンタジックな気分になります。
キンランはラン科の多年草で、一株に直径1~2センチの花を3~4輪から10輪くらい、
群生せず1~2本が極くまばらに点在している程度ですが、金蘭からサインを送られて
くるような感じでその在り処が…。決して大きくはないけれど、一株でも存在感があり
ます。
長年、玉川上水の野草を観察している方々の話では、今年はキンランが近年になく豊
作でことに鎌倉橋~久右衛門橋左岸、中央公園の南側の堤、上水新町地域センターの
敷地内で多く見られました。でも、私が最初に出会った保存樹林の“かぐや姫”は翌年
には開花直前に盗掘され、姿を消してしまいました。今年の4月25日、大けやき道近く
の堤にあったギンランも二日後に再訪した時には持ち去られていました。上水堤ではキ
ンランよりも数少なく、貴重な存在なのに…。