今年も残り少なく気忙しい時候を迎えました。この時期に差し掛かると何故か東大
農場のポプラ並木が恋しくなります。あの北海道を思わせる牧歌的なポプラ並木!
西武新宿線田無駅から歩いて10分余り、市街地に接して広がる10万坪の東大農場
と演習林。その北部の一角にあるポプラ並木は目測 80メートルほどですが、並木越
しに望む景観は北海道の大地を思わせて気分が解放され、一年を静かに振り返るに
絶好の場所のような気がして…。
ところが、所沢街道に面した正門には「東京大学大学院農学生命科学研究科 附属
生態調和農学機構」と長ったらしく難しい名称の銘盤が掲げられ、東大農場も正式名
称は「東京大学大学院農学生命科学研究科 附属農場」だそうで、今年の4月1日か
ら大幅に改組され、端的に言えば従来の農業の生産性を追求する研究から、生態系
の働きを追求する研究機構にチェンジ!したとのこと。
確かに地球温暖化に備えてチェンジも大事ですが、原風景を保つことも生態系の上で
は大事なのではないか…と、機構側の説明に矛盾を抱きながら場内を散策してみまし
た。
明治11年(1878)新宿御苑内に創設された農学校が東大農学部の始まりで、幾多の変
遷を経てその附属農場がこの田無町(現在西東京市)に移転してきたのは昭和 10年で
多摩農場と称され、戦後、昭和22年10月に東京大学農学部附属農場と改称。地域では
東大農場と呼ばれてきたそうです。その当時以後建設された木造平屋の作業場や農機
具小屋、家畜の飼育場などが現在も見学通路から見られますが、いずれは取り壊され
たり、新しい研究施設に生まれ変わるようで、今回が見納めか…と。
数年前まで畜舎や放牧場が広がり、大型のサイロが望めたエリアは立ち入り禁止に!
サイロも畜舎も今年の3月に取り壊され、殺風景な冬景色になっていました。かつて
は親子連れのピクニック姿が見られ、乳牛たちと親しめたのに…。三年前に訪ねた晩
秋には長い脚で闊歩していたダチョウも6月に移転したそうです。
そしてシンボル的だったポプラ並木も「枝の落下に要注意」の立札があり、ロープが
張られて立ち入り禁止になっていました。枯死したのか伐採された切株もあり、ポプ
ラ並木から眺められた景観も様変わりしてしまいました。
さらに東大農場・演習林を分断する西東京3・4・9号線都市計画道路も予定されてい
るそうで、それこそ生態系を壊す開発行為ではないかと思うのですが、研究施設の附
属の農場である以上推移を見守るしかないのでしょうか?
放牧地に接して広がる演習林は健在でしたが、演習林内で毎年営巣しているオオタカ
の狩場である農場がコンクリートで分断されたら、絶滅が危惧されているオオタカは何
処へ追いやられるのでしょうか?私たちにも住みにくい世の中になったことを痛感する
一年でした。
今年の3月末で消えてしまったサイロ。1975(昭和50)年3月に竣工したタワー
サイロは直径6m、高さ18.021m、貯蔵量約3003立方メートルのドイツ製リップ
システムサイロでした。