折々通信 No.15 黄落期

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            墨の色 人生重ね 黄落期
   いい夫婦の日だった昨日、八王子市民文化会館・いちょうホールで開催されている
   吉沢和子さんの書展「墨の周辺展」へ。
   書道展には何度か足を運んだことがありますが、こんなに多彩で楽しめる書展は初
   めてでした。墨の濃淡がカラフルに感じられ、絵のように感じられる書道展でした。
   同市在住の吉沢さんは前衛書家・榊莫山(2010年没)に師事して、バクザン先生か
   ら、「絵と書のはざまから光を放つ」と絶賛された書家です。2000年に国際公募アー
   ト未来展で内閣総理大臣賞を受けています。
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   同ホールの展示場1階と2階で展開された吉沢さんの書展は、はがきサイズの作品
   から掛け軸、4曲屏風の大作まで90点あまり。「26歳から書を本格的に習い始めて
   半世紀近く、自分を見つめ直すとともに、これからの自分の道を求めるために、初期
   から今日までの作品を展示することにしました」と吉沢さんは語っていました。
   パソコンやスマホの普及で文字を書く人も機会も減少していますが、仏教の伝来とと
   もに根付いた漢字文化と日本で発祥したかな文字の素晴らしさ、漢字と仮名文字で
   綴られてきた古典の数々。吉沢さんは好きな句や短歌、詩やフレーズに出会うと、そ
   の世界を書で表現したくなるそうです。書も自己表現の一つだと語っているのが心に
   残りました。啄木も賢治の作品も吉沢さんの書になると、その時代が重なってくるよう
   な気がしました。
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   書のお弟子さん達から「先生は山も好きなんですよね?」と聞かれて、「そう大好き」と
   答えていたので、吉沢さんは山登りもするのかと驚いたら、「山を見るのが好き」と。一
   同大笑いしてしまいました。好きな山に出会ったら、その山の姿を書にするそうで、吉
   沢さんの「山」の字は団子を連ねた山から急峻な山まで、変化に富んでいます。こんな
   に自由に字が書けたら…と、羨ましくなりました。お手本通りに書こうとするから書道が
   嫌いになった人も多いのでは?私もその一人です。

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   「智恵子は東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ」「あれが安達太良山、
   あの光るのが阿武隈川…」「小鳥のやうに臆病で、大風のやうにわがままなあなたが
   お嫁にゆくなんて」など、吉沢さんは高校時代、担任の先生が朗読してくれて以来、高
   村光太郎の詩集『智恵子抄』に惹かれ、書でもライフワークの一つにしています。

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   智恵子の実家のある二本松市や安達太良山、精神病を患った智恵子と光太が過
   ごした地、戦後、光太郎が思索のために移り住んだ花巻市などを訪ねるほどの凝り
   よう。今回の書展では 『智恵子抄さすらい』 と称したコーナーも。上は和紙に溶かし
   た蝋で 『智恵子抄』のフレーズを書き、墨を置いた後、蝋を溶かして仕上げた労作。
   150㌢足らずの小柄な吉沢さんの何処に、そんなパワーが潜んでいるのでしょうか?
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   清酒や焼酎のラベル、本のタイトルや挿画、暖簾、岩波書店のポスターなど吉沢
   さんの書の世界は多彩です。
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  同展から帰途、お寺の境内で目にした落ち葉です。そろそろ暮紅葉から黄落の時期に。
   下は吉澤さんの書いた来年の干支「申」です。
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by love-letter-to | 2015-11-23 17:16 | 折々通信 | Comments(0)

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