アカシア記念日

毎度古い話で恐縮だが、20年ほど前の5月半ばのこと、仕事で遅くなり、国分寺駅
からタクシーで帰宅した。途中、あかしあ通りに差し掛かった時、運転手から「この
通りのアカシアは花が咲くんですか。もう何年も毎日走っているけど、花を見たこと
がないなア」と、聞かれた。

そう言えば、私も小平団地に住んでいた時代から、あかしあ通り両サイドに植え
られているアカシアの花を見た記憶がなかった。

その前日、福生の熊川付近でアカシアが白い花房をたわわにつけていたから、開
花シーズンに違いない。何となく気になり、気になりだしたら落ち着かない“ご苦労
な性分”の私である。

植物図鑑によると、日本で一般にアカシアと呼ばれているのはニセアカシア(別名
ハリエンジュ)。明治時代に輸入されたニセアカシアを当時アカシアと称していたこ
とから現在でも混同されることが多い。気に食わない名称だがあかしあ通りに植えら
れているのもニセアカシアである。

で、翌日、喜平橋から小平駅南口まで、あかしあ通りの両サイドに植えられている
アカシア、正確にはニセアカシア並木を見て歩くと同時に、通り沿いの商店街の店
主や従業員に、「お店の前のアカシアに花が咲いたのを見たことがありますか」と、
訊ねて歩いた。西田佐知子の『アカシアの雨が止むとき』の歌声を懐かしみながら…。

いずれも首を横に振るだけであったが、「刈り込み過ぎでないの?」「花は咲かない
くせして、根はうちの敷地内まで伸びて来てヒコバエが殖えてしょうがないんだよ」と、
恨めしそうにアカシアの木を見上げる人もいた。

確かに、私の歩幅で12~13歩ごとに植わっているニセアカシアは図鑑で見る樹形
とは全く違って、切り詰められた枝先でわずかな葉がプルプル震えていた。

小平市役所の道路課(当時)の話では、あかしあ通りが開通したのは昭和46年(1971)。
沿道に植える樹種選定には市内在住の園芸家・柳宗民さんにも相談をして、
葉の緑が優しく美しく、花も楽しめる落葉樹のニセアカシアを選んだとのこと。

しかし、市内のメインロードの一本で交通量も多く、枝葉が伸びると信号が見えない
という苦情が多い上に、商店街からも落ち葉の掃除に追われるという声が多く、交通
安全の立場上、年一回業者に剪定を頼んでいるという。折角、花も楽しめるニセアカ
シア
を並木に植えながら、現実は花より道路事情優先になってしまうのも致し方がな
いのか…NHK教育テレビ『趣味の園芸』の講師としてもお馴染みだった柳宗民さん
にもご意見を聞きに伺った。

東京街道沿いの泉蔵院の裏手に住んでおられた宗民さんの草深い平屋を訪ねて
びっくり。言っちゃあ悪いだけど、掘っ立て小屋みたいで、犬や猫、山羊や鶏も同居し
ており、カラスまで羽をバタバタさせて歓迎してくれ、のけぞってしまった。

よれよれの作業着姿の宗民さんはクシャクシャの人懐こい笑顔を浮かべながら、「実
は私もあかしあ通りのアカシアは刈り込み過ぎだと言っているのですが、苦情の電話
が多くては担当者も切らざるを得ないのでしょう。もう少し枝葉を伸ばしてやったら
景観もよくなるのに…」と、顔をさらにクシャクシャにした。

現在、ルネこだいら付近から小平駅前ロータリーにかけて植えられている葉が黄緑
色のキバニセアカシアの並木は全国でも珍しいので、大切に維持管理するように
要望しているとのことだった。

「我が家もこんな草茫々にして…と周囲からよく思われてないようですが、一木一草
に命ありで、それぞれ精一杯生きている。雑草が私の先生なんです」と、宗民さんは
戸口のカラスムギやオニタビラコに愛おしそうな目を注いだ。

それから20年、今月4日のこと。玉川上水の野草観察から引き揚げる時、喜平橋
から北に50メートルほどの所で、一本のニセアカシアが白い花房をたわわに付け
ているのに気がついた。「まさか夢でないでしょうね!」何度も目を凝らして確認した。
間違いなく花房だ!やったぜ!ニセアカシア!
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あかしあ通りの並木には花が咲かないものだと決め込んで、見上げることもなく過
ごしてきたが、2007年5月4日、『国民の休日』から改称されて初めての『みどりの
日』に、ニセアカシアの花が咲いているのを確認した。

さらに小平駅までのあかしあ通りの両側の並木の一本一本を確認して歩いたところ、
相変わらず貧相な樹形が殆どだが、小平団地付近で4~5本が花を咲かせていた。
青梅街道からルネこだいらまでには10本ぐらいが花房をつけていた。

柳宗民さんは残念ながら昨2006年2月に他界されてしまったが、一言お伝えした
かった。「今日、あかしあ通りのアカシアに花が咲いているのを見たから、アカシア
記念日
にしました」と。俵真知子さん風に。
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Commented by ふうさん at 2007-05-09 00:00 x
「みどりの日」 に にせアカシアの花が20年ぶりに咲いたとは
本当におめでたいというか嬉しいですね。
柳宗民さんはグリンロードのお祭りによくお会いしていました。
お亡くなりになってから花が咲き、きっと喜んでおられる事でしょう。
先日モグラさんがアカシアの花が咲きルンルンの気分とおっしゃいましたが、私たちもブログを読ませていただき(アカシアの雨がやむ時・・・)の歌が聞こえてくるようです。思わず口ずさんでしまいました。いつも良いお話をありがとうございます。
Commented by cheery at 2007-05-09 13:32 x
大昔、よくテレビで柳宗民さんの”趣味の園芸”でしたか、主人がファンで見てました。私も一度公民館での講習会でお目に掛かりました。丁度、駐車場に留めた私の車の隣に先生の車が留めてあって
とても驚いたことを覚えています。全くルックスなんか気になさらない、本物の学者にお会いした気がしたものです。
これから私もアカシアの花を気にしながら通ります♪
Commented by 小平のモグラ at 2007-05-09 19:26 x
あかしあ通りのニセアカシアの花を見つけたのが
嬉しくって、今回はイレギュラー版の『忘れ得ぬ人々』
だったのですが、ふうさんもCherryさんも柳宗民先生
とはお馴染みで、私よりもよくご存知かもしれません。
柳先生は小平の地元でも、園芸講習会や緑と花の
イベントに協力され、気さくな方でしたから…。
でも、早々と読んで頂き恐縮です。今日も小平駅へ
のバスの車窓から、「あっ!咲いてる咲いてる!」と、
ニセアカシアの花にエールを送ってきました。
Commented by gol9243 at 2007-05-09 20:00 x
小平のモグラさん はじめてコメントいたします。ニセアカアシアの話、おもしろく読ませていただきました。花が見られるとのことで、家から近いこともあり、早速見てまいりました。警察学校のところでした。帰りは反対側の歩道を見ましたが、なかなか見つかりません。ところが、jomoのスタンド近くに街路樹ではなく、歩道沿いの空き地に太いのが2本生えており、白い花が満開。樹皮、葉の様子からニセアカシアだと思います。
Commented by スクハジ at 2007-05-09 21:14 x
小平のモグラさんは本当に物知りで驚きです。アカシア通りの街路樹がニセアカシアだとはしりませんでした。葉も涼しげで柳宗民さんが選ぶのも納得ですが、花が咲かなかったとは・・上水ばかり歩いていないで、そちら方面にも目を向けなくては・・ニセアカシアは何年か前に安曇野の山葵田に行ったとき沢山の花を見て写真に収めたのを思い出し、懐かしく開いて見ています。柳宗民さんに、見て頂きたかったですね!
Commented by 小平のモグラ at 2007-05-09 21:42 x
golfさん、初めまして!あかしあ通りのニセアカシアを
早速、見て歩かれたとか。
私が観察したところでは、喜平地域センターの前辺りの
対面の木に沢山花房をつけています。
それから、小平団地の1-11号棟の前の木にもかなり
房が下がっています。
さらに、北へ進んで青梅街道を渡り、ブドウ畑の横に2本
花房がかなり見られます。その他は注意深く見ないと…。
全く物好きなモグラでしょ。
Commented by 小平のモグラ at 2007-05-09 22:00 x
スクハジさん、あかしあ通りのニセアカシアは安曇野に自生して、
自然に枝葉を伸ばしているのと違って、見栄えは全くしません。
スクハジさんが安曇野で撮って添付して下さったニセアカシア
の白い花房は、本当に気高く素敵でした。
なお、野生の猿はこのニセアカシアの花が大好物だそうで、
開花シーズンはモンキーたちがご機嫌で食べています。
Commented by coffee_break at 2007-05-10 06:28 x
毎回楽しみに読ませていただいておりますが、初めてのカキコです。
柳先生には20数年前に3年ほど園芸教室でお世話になりました。
先生の語りが好きで毎回一番前の席に陣取ってお話を聞くのが楽しみでした。
先生がテレビ出演や取材で海外にいらっしゃるときは奥様が講義をしてくださいました。

街中でお会いすると、長靴を履きバイクに乗って一見、今時・・・と思うような姿格好ですがお話が始まるとは実に可愛らしく魅力的でしたよ。
確か昭和皇后 様のご親戚と伺っていましたが。
外見はどうであれ、血筋なんだな~と妙に感心したことがあります。
先生にアカシアどおりのニセアカシアの花を見ていただきたかったですね。
Commented by 八方池すみれ at 2007-05-10 06:57 x
初めまして。小平の過疎地と云われている、(何故かというとADSLが届かないから)我が家からはあかしあ通りというところは殆ど縁がないところなのでたまに車で通り過ぎるだけで街路樹を見上げる機会もありませんでした。そうでしたか、モグラさんのお陰で興味が沸きました。ニセアカシアなんて名前も面白いしキバニセアカシアなどもモグラさんは物知りですね。いろいろありがとう。
Commented by 小平のモグラ at 2007-05-10 11:00 x
cofee_breakさんは柳宗民先生の園芸教室に3年も通われ
たそうで、だからcofee_breakさんのHP我が家の花のページ
にも“美女”揃いなんですね。見てはため息ばかりついてます。

八方池のすみれさんは小平の“上高地”付近にお住まいで、
山歩きのベテランですから、あかしあ通りのニセアカシアなんて
貧相で観賞価値はないかもしれませんが、調べてみると秘話
ありで、あかしあ通りの名称もアカシア(正確にはニセアカシア)
に由来しています。植えられて36年、その間、歩道の拡幅整備
工事で一時別の場所に避難させられたこともあり、樹齢の割りに
細く、枝葉も短く刈り込まれているので、飢餓状態に見えるのが
残念ですが、それでも花を咲かせた生命力に心打たれている私
です。きっと柳先生も草葉の下で見守っておられることでしょう。

Commented by ふうさん at 2007-05-10 12:13 x
モグラさん 昨日のブログに 咲いている場所が書いてありましたので、今朝の散歩で見ようとカメラ片手に元気に行きましたら、なんと私の家にも近いルネの南側(ガソリンスタンドの前)にも咲いていました。よく通っているのに上を向いて歩かなかったが・・今日は しっかり♪上を向いて歩こう♪ と坂本九ちゃんの歌を歌いながら、ニセアカシアの花を満喫してきました。 ありがとうございました。
Commented by 小平のモグラ at 2007-05-10 16:26 x
早速、あかしあ通りのニセアカシアを見上げて、デジカメで
キャッチしてこられたとか。あのガソリンスタンドの前の
木はかなり花房が下がって、ニセアカシアらしいでしょ。
それにしても、「上を向いて歩こう!」を歌いながら…とは
ふうさんって楽しい!
Commented by すみれ at 2007-05-10 21:59 x
ウッフ、モグラさんありがとう。今日から”過疎地”改め「小平の上高地」 いいですねえ。八方池もいいけど上高地も更にいいですね。頭いいこと。 すぐにその気になる単純なすみれより
Commented by h-sato65 at 2007-05-10 23:19
皆さん、‘あかしあ通り’で珍しい交通事故が多発して小平警察でその原因究明に躍起になっているということです。脇見運転によるニセアカシアへの衝突事故、もう一つは歩行者による‘モグラの踏みつけ事故’です。ニセアカシアの花が咲いたのが原因らしいとの住民からの情報が多数寄せられているようです。
取り敢えず、‘脇見・ならびに上を向いて歩かないように’と珍しい看板をあかしあ通りに建てかけることになったようです。
・・SBCブログサークル支配人より・・・
Commented by 小平のモグラ at 2007-05-11 11:11 x
あかしあ通りのニセアカシアが咲いて喜んでいたら、
交通事故がが多発しているそうで、心が痛みます。
ただニセアカシアには責任がないはず。
やはり、私モグラは今春初めてニセアカシアが咲いたの
目にしましたが、小平署で原因を究明するくらいですから、
今年はドライバーでも見えるくらいに花を咲かせ、珍しかった
のでしょうか。
実は玉川上水堤でもモグラの穴を数ヵ所発見。五日市街道や
あかしあ通りまで浮かれ歩いて踏みつけられたとは!
小平のモグラもアカシアを見上げて歩いて頓死!ってことに
なりかねません。SBCブログサークル支配人さんご忠告
有難うございました!ふうさんも気をつけてね!ブロガーの
皆さんも!

Commented by 小平もモグラ at 2007-05-11 11:35 x
小平の“上高地”にお住まいのすみれさんへ。
小平市のホームページによると、小平市の標高は76.815mと
なっていますが、西の中島町付近から東に向かって緩やかに
下った地形になっており、玉川上水の上流部はまさに小平の
上高地なんですよ。上高地の優雅なすみれさん!
by love-letter-to | 2007-05-08 11:15 | レクイェム | Comments(16)

忘れ得ぬ人々&道草ノート折々


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