再燃した残暑は衰えぬまま八月も半ばを過ぎました。この「道草フォト575」も前回で
150回。道草もそろそろ終わりにして、気分転換をはかろうかとえたのですが、車の運
転はできず自転車も乗れない私には、このまま半径 500メートルほどのエリアを歩くし
かなく、「吾亦紅わが身の丈にあう日々を」と。
大気の不安定な日が続いており、昨日は雷がゴロゴロ鳴り始めた頃、商大橋に差し掛
かりました。 一週間前には目につかなかったワレモコウの濃紅が、上水堤に点々と秋
を振りまいているようでした。
玉川上水の吾亦紅は周囲の草と競い合って丈ばかり伸びすぎ、野辺山高原で出会
ったような風情はありませんが、僅かの風にも揺れて高原の風も伝わってくるみたい。
ほっそりと分岐した茎の先の暗紅色の花穂は長さ 1~2 センチ。カプセル錠みたいな
一つ一つは、花にしては素朴です。
しかし、そのひそやかで人恋しそうな風情から和名は吾亦紅あるいは吾木香、我毛紅と
も書かれ、秋草の代名詞の一つで詩歌にもよく登場しています。花穂は穂状に小花が
密集したもので、上から順に開花して、全開すると和紙のつまみ細工のようになります。
一位橋下流の自生野草保護ゾーンでは、ツリガネニンジンが円錐形の花序を立てて小
さな釣鐘型の花が段咲に。花径は1センチ足らずですが、薄紫色の釣鐘の縁に淡い緑
色を一刷毛はいて、涼味を添えています。この花に出会うと厳しい残暑も忘れます。
先ほどからの雷がいよいよ近づいて雨もポツポツ落ち始めましたが、「もう少し待って」
と、祈るような気持ちでシャッターを切りました。最盛期を逃すとまた一年先まで待たな
ければなりませんから、野の花との出会いは一期一会です。
上水堤の釣鐘人参には薄紫色と少し濃いめの紫色の二種があり、濃いめの方はまだ
しばらく開花期が続きます。 和名は釣り鐘状の花が咲き、大きな根が朝鮮人参に似て
いることに由来。若い茎は柔らかく、トトキと称して山菜として食され、「山でうまいはオ
ケラにトトキ、嫁に食わすはおしうござんす 」と、かつてはご馳走であったようです。トト
キはとっておきの意味だとか。こんな可憐な花をつける野草も、繁茂する地方では“花
よりだんご”だったのですね。そんな豊かな自然も過疎化やかつて経験したことのない
豪雨・土石流被害などで、衰退の一途だとか。
先週訪ねた時は数株しか見られなかったキツネノカミソリが、昨18日にはどっと咲い
て辺りが朱赤で染まるくらい。嬉しい再訪でした。昨年並みか、しのぐくらいの勢いで
した。開花が1週間ほど遅れていたのですね。
キツネノカミソリの花の形はノカンゾウに似ていますが6枚の花被片は開き方がノカ
ンゾウより鋭角で、キツネのとがった口の形に似ていることから、和名は狐の剃刀。
ヒガンバナ科で、ヒガンバナ同様に開花期には葉がありませんが、花の後に出てくる
葉が尖っていることから、狐の剃刀の名称になったという説も。どちらにしても、堤に
華やぎをもたらせてくれるキツネノカミソリが健在で、この日は幸せでした。その後、
雨に降られてしまいましたが…。
今朝の秋(8月17日早朝撮影)