9月最初の日曜日。9月1日を迎えるなり、明け方の激しい雨の音で目が覚めました。
まるで滝の音を聞くようでしたが、1時間もすると青空が広がり、陽射しもギラギラ。そ
の変化の激しさに戸惑いながらも、「仙人草がきっと咲いているはず」と記憶をたどり
ながら、日中2時間くらい上水堤へ。例年なら商大橋から上流右岸にはフェンスや下
草にからまりながら、仙人草が白い炎のように咲き誇っている時期です。でも、記録
的な猛暑のせいか、雨不足のせいか…茂みに隠れるようにして、わずかに咲いてい
るだけでした。猛暑続きで私の記憶の糸もからまっちゃったかな…そんな思いでした。
ほんの申しわけ程度に開花していた仙人草は、はなびらに見える4枚の白い萼片も
雌雄の長めの蕊にも、大きな雨露が光っていました。キンポウゲ 科の蔓性植物で、
仙人草の名はこの種子の羽毛が仙人(老人)のヒゲにたとえられたと言われていま
す。
旧小川水衛所跡の回りのフェンスには、その“仙人の髭”を蓄えた種子をたくさん見
ることができましたが、同水衛所跡も「玉川上水散策路等整備事業」の一環で、先
月初めから工事中です。
東京都水道局により、玉川上水により親しめるよう既存の橋を利用して左岸と右岸
が行き来できるようになり、緑道がつながるそうです。工事の期限は来年4月24 日
とのこと。
大気の不安定で晴れたり土砂降りになったり、目まぐるしく変化する昼下がりでした
が、晴れ間にはキツネのマゴ(狐の孫) もピンクの花を覗かせていました。マッチ棒
の頭くらいの小さな花ですが、不思議と存在感があります。キツネノマゴ科の一年草
で、草丈は10~15センチ。名前の由来は諸説ありますが、子狐の顔に似ているよう
に見えます。新見南吉の「ごん狐」の胸に迫る哀しい童話を思い出したりして…。
この付近の堤では減少して気にかかっているツルボも2~3株、開花していました。
8月末頃から9月半ば過ぎまで、20~30センチの花茎の先端部に4~7センチの花
穂に淡い紅紫色の小花をたくさんつけて、とても愛らしい姿です。花は直径5ミリぐら
い。公家が宮中に参内するときに使用した傘に似ていることから「参内傘」 の別名も
あり、群生していると、その趣が感じられます。喜平橋下流に小群落がありましたが、
先日訪ねた折りには下草刈りされていたので、今後見られるかどうか…。
回田本通りに面した「農林中金研修所」の南側に広がっていた広々とした農地も、今
年の初夏ぐらいから白い幕で囲われ、宅地造成が行われています。回田本通りから
五日市街道にかけて、新田開発当時の地割が残っており、この一帯で短冊農地が見
られる唯一の地域でした。時代の波でまた一つ伝来の農地が消えました。 この短冊
農地と玉川上水の木立を望む景観は小平の歴史的・文化財的な価値があったと思う
のですが、如何でしょう?
こうして私の記憶の糸も次第に途切れて、失われてしまうようで残念です。