11月最初の日曜日。北国はもう最低気温が零度を下回ったそうですが、首都圏は
朝夕の冷え込みも少し緩んで、穏やかな秋日和に。こんなうららかな日には上水堤
でもノコンギク(野紺菊)、ユウガギク(柚香菊)、ヨメナ(嫁菜) など、いわゆる野菊の
仲間たちが足元でウララウララと残り少ない秋を楽しんでいるみたい。歩く足も弾ん
できます。生きとし生ける物すべてが愛おしく見えます。
花径2センチ足らずのユウガギクにも、シジミチョウや小さな虫たちが入れ代わり立
ち代わり訪れて、筋書きのないドラマも展開しています。花から花へ情を移す飽きっ
ぽい虫もいれば、一つの花に思い込んだら命がけみたいに、執着している虫もいて、
なかなかの役者たちです。
桜橋上流右岸の茂みにヤブマメ(薮豆)の花も見つけました。インゲンや小豆などマ
メ科の野菜の原種を感じさせる野の花で、蝶型の花の径は1~2センチぐらい。
白い花弁の一部をうっすらと青紫色に染めて、茂みに隠れるように咲いていました。
細いけど弾力性に富んだ茎から互生している葉は、三枚の小葉からなっていて、イ
ンゲンの葉にそっくりです。このような原種が永年かけて改良され、私達の食卓を豊
かにしてくれる野菜が誕生したのでしょう。
ソバの花にそっくりさんも新堀用水沿いに。シャクチリソバというインド北部および中
国原産のソバ科の多年草だそうで、この辺りでは草丈は約50~60センチですが、1
メートルに達することもあります。
花径5~6ミリの白い花は肉眼では白一色に見えますが、5枚の白い萼と8本の雄蕊、
雌蕊の花柱は3本に分かれており、それぞれの葯は鮮明な口紅色で、愛らしさを秘め
た花です。
その名の由来は茎の根元が赤いことによるそうで、牧野富太郎博士が本草綱目の「赤
地利」にあたるとして命名。でも「赤地利」の由来や語源は不明だそうです。
堀の暗がりで、細い柄の先に10~20数個の花が寄り集まって咲いている姿は、園芸
植物にはない素朴な美しさがあります。
食用として用いられているソバ(蕎麦) とは違って多年草ですが、果実(痩果)はソバの
実と同じ三稜形をしています。上は先日、昭和記念公園・こもれびの里で撮ったソバの
花です。やはり雌雄の蕊の葯は濃いめの口紅色です。蕎麦の花には赤花もあり、観光
用として休耕地などに植えられて人気を呼んでいますが、あれは韃靼(だったん) 蕎麦
の花だとか。
文化の日の昨日、田無本町のマンションの一室で開かれていた知人の絵の作品展を
見ての帰途、田無総持寺の門前で、「あれ、何の実かしら?いっぱい付けている」と、友
人が空を見上げました。軽やかな雲を刷いた コバルトブルーの空に、銀杏色の実を鈴
生りにつけた大木が聳えていました。
境内に入って見ると、その樹の幹に「西東京樹木50選 マメガキ」と書かれたプレートが
取り付けられていました。
根元に落ちていた銀杏色の実は、どんぐりとほぼ同じくらいの大きさですが、長楕円形
型の柿にそっくり。ちゃんと蔕(へた)もつけており、マメガキの名にぴったりでした。口に
含んでみた友人は「ワーッ、渋い!」と、顔をしかめていましたっけ。
帰宅して インターネットで検索してみたら、カキノキ科の中国原産の落葉高木で、果実
は 直径1.5cmほどで小さく、これが豆柿あるいは葡萄柿の名前になったのであろうと
のこと。マメガキは霜が降りる頃に渋が抜けるので、一部食用にされたこともあるそうで
すが、未熟果が含むタンニンは防腐防湿効果があるので、主に柿渋として和傘や提灯
を張る紙に利用。麻縄や魚網を浸すと腐らなくなり、長期の使用にも耐えるようになると
のこと。
ビニールや塗料に石油化学製品が出回るまで多用されており、私が最近購入したポー
チの布地は柿渋で染色してあると、タグに書いてありました。意外な所で意外なことに
出会った文化の日でした。